No.162:虹波(理研ver.)

パイル二等兵

2024年03月11日 00:00

ようこそ大日本衛生資料室へ。 本日ご紹介する資料はコチラ・・・


資料No.162:虹波(理研ver.)

   品名 : 虹波
   製造 : 理研栄養薬品株式会社
   販売 : 虹波社
   分類 : 外科的化膿性疾患治療剤
   年代 : 昭和21~24年(1946~1949年)
   定価 : 不明(値札は23.5円)
   寸法 : 6.2×2×2cm ※外箱
   個数 : 1個(国立療養所菊池恵楓園歴史資料館様へ1つ寄贈)
謎多き薬品「虹波(こうは)」です。

虹波研究は、昭和10年代に理化学研究所の理学博士「尾形輝太郎」が合成した感光色素を、
熊本医科大学の医師「波多野輔久」が医療への転用を試みたことからから始まったようです。

感光色素には抗菌作用や新陳代謝の効果があると考えられ、
日本陸軍が機密扱いで「虹波」「紫光」を開発。
熱傷、凍傷などには一定の効果があったようですが、抗生物質ほどの効果はなかったようです。
(現在「ルミンA」という名で感光色素を用いた市販薬が販売されています)

「虹波」の名称は、陸軍第七技術研究所の所長「長澤重五」(陸軍中将)が、
「虹」は感光色素から、「波」は「波多野輔久」の名字からとって命名したようです。

開発段階では「虹波」が「虹波1号」、「紫光」が「虹波12号」と呼ばれていました。
 ※「紫光」の記事はこちらをクリック→『No.135:紫光』

陸軍が研究を進める中で、ハンセン病患者への臨床試験で9名が亡くなっており、
現在その倫理性が問われています。


製造元の「理研栄養薬品株式会社」の沿革は以下の通り。

大正6年(1917年)
   皇室・政府からの補助金、民間からの寄付金を基に「財団法人理化学研究所」を設立。
昭和13年(1938年)
   同研究所を母体として研究成果を工業化するための「理研栄養薬品株式会社」を設立。
昭和15年(1940年)
   「小湊潔」が「日生化学研究所」を設立。
昭和18年(1943年)
   「日生化学研究所」が「理研栄養薬品株式会社」に合併し京都工場となる。
昭和24年(1949年)
   「理研栄養薬品株式会社」のビタミン部門を分離独立し「理研ビタミン油株式会社」を設立。
   「理研栄養薬品株式会社」が倒産。 ※ビタミン部門のみを残して発展解消した可能性あり
昭和25年(1945年)
   集中排除法により「理研グループ」が解散となる。
昭和26年(1946年)
   旧京都工場が「理研化学工業株式会社」を設立。
昭和55年(1980年)
   「理研ビタミン油株式会社」が「理研ビタミン株式会社」に社名変更。


販売元の「虹波社」の沿革については詳細不明。



外箱

薬品自体は非常に興味深いのですが、パッケージはこれといって特筆すべき点はないですね。


漢字が「旧字体」で書かれている、いわゆる「旧字体モノ」ですので、
昭和30年以前の品であると推測出来ます。

「理研栄養薬品株式会社」名義ですので、昭和13~24年の品であると判断出来ます。

収入印紙が貼られていませんので、大正15年以降の品であると判断出来ます。

「価格統制品」マークが押されていませんので、昭和15~21年以外の品であると判断できます。
また戦後の雰囲気を感じますので、昭和21年以降の品であると推測できます。

以上のことから、この品が昭和21~24年に製造されたと判断出来ますね。



中身

中には説明書と墨色の紙に包まれた筒状の容器が入っています。

光に当たらないように紙が糊付けされているので、これ以上は中身をお見せすることができません。
おそらく筒状のガラス瓶にコルク栓が付いていると思います。



説明書  ※画像をクリックすると拡大します

この説明書を読んでも、いまいちこの薬品がどういう風に何に効くのかよくわかりません…
製造販売元には「理研栄養薬品」だけではなく、
「佐藤製薬」、「塩野義製薬」、「武田薬品工業」と錚々たる製薬会社が名を連ねていますね。



この薬品に関する追加情報をお持ちの方は、
「コメント」または「メッセージを送る」から御教授下さい。

それでは、またのお越しを・・・



【室長日誌】
 「理研栄養薬品株式会社」が1949年に倒産したことは、
 「理研ビタミン株式会社」に問い合わせたところ判明しました。
 まだまだネットですべての情報を賄えないと言うことですね。


【関連リンク】
 理化学研究所ホームページ
 理研ビタミン株式会社ホームページ
 理化学研究所 - Wikipedia
 理研ビタミン株式会社 - Wikipedia


【当資料室の注意事項】
 ●ご紹介する薬品に違法な物は含まれておりません(・・・多分)。
 ●記載されている情報はネットで軽く調べた程度のモノです。
 ●薬の年代特定に関しては『レトロな薬の年代特定法』を参照して下さい。
 ●「旧字体モノ」「右書きモノ」などの「〜モノ」は私が勝手に名付けただけです。
 ●「陸軍衛生材料廠」の品を「陸軍衛生材料」としていますが、私が勝手に呼んでるだけです。
 ●米帝の薬品類は『パイル二等兵の露営日記』にてご紹介致します。
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