衛生兵の代名詞、「管入沃丁」です。
「沃丁」は「沃度丁幾」の略で、皆さんご存知「ヨードチンキ」の当て字ですね。
「ヨードチンキ」は「ヨウ素(ヨード)」の殺菌作用を利用した殺菌薬・消毒薬のこと。
旧日本軍では衛生兵の事を「ヨーチンを塗るくらいしかできない者」と言う侮辱の意味を込め、
「ヨーチン」と呼んでいたそうです。
ただし戦闘経験豊富な兵士は衛生兵の重要性を知っていたため敬意を込め、
「衛生兵殿」と呼んでいたそうです。
管理元の「陸軍衛生材料廠」の沿革については詳細不明。
日本陸軍が使用する医療品を製造・調達・管理していた部署だと思います。
「本廠」「支廠」「出張所」などと言う表記を見かけますので、日本各地に存在したのでしょう。
東京都世田谷区にあった「本廠」跡には昭和21年に「国立衛生試験所」が移転。
「国立衛生試験所」は平成9年に「国立医薬品食品衛生研究所」へと改組され現在も同地にあります。
一般の薬品類の規格が品質規格書「日本薬局方」に基づいているのに対し、
「陸軍衛生材料廠」管理の薬品類の規格は「陸軍薬局方」に基づいている。
「陸軍衛生材料廠」に関する資料がネット上で公開されている為、今後解明する予定です。
外箱
表に製造印がありますが、ラベルが劣化しており製薬会社の名前が分かりません・・・
どなたか「管入沃丁」の製造元をご存知ないでしょうか?
裏には使用方法が書かれています。
漢字が「旧字体」で書かれている、いわゆる「旧字体モノ」ですので、
昭和30年以前の品であると推測出来ます。
戦時中にも係わらず、横書きの文字が現在と同じ左から右に書かれています。
何故か「陸軍衛生材料」は、当時主流だった右から左に書く「右書きモノ」ではないのです。
軍用品ですので、戦前の品であると判断出来ます。
「昭和14年」のスタンプが押されているので、この品が昭和14年に製造されたと判断出来ますね。
(残念ながら月日が判読不能・・・)
中身
「ヨードチンキ」の入ったガラス管にガーゼが付属しています。
使用方法によると、ガラス管を砕いてガーゼに薬剤を染み込ませ、それを患部に塗るようです。
10本入りですが、残念なことに1本欠品です・・・
この薬品に関する追加情報をお持ちの方は、
「コメント」または「メッセージを送る」から御教授下さい。
それでは、またのお越しを・・・
【室長日誌】
「ヨーチン」は軍医並びに衛生兵の基本装備ですね。
かつて我が家に「赤チン」がありましたが、
「赤チン」は「ヨードチンキ」ではなく、「マーキュロクロム」という別の薬剤です。
現在「赤チン」は安全性が未検証のため、販売停止になっている国々があるようですが、
希釈液の毒性は小さいので、外用薬としての使用に限っては安全なようです。
【当資料室の注意事項】
●ご紹介する薬品に違法な物は含まれておりません(・・・多分)。
●記載されている情報はネットで軽く調べた程度のモノです。
●薬の年代特定に関しては『
レトロな薬の年代特定法』を参照して下さい。
●「旧字体モノ」「右書きモノ」などの「〜モノ」は私が勝手に名付けただけです。
●「陸軍衛生材料廠」の品を「陸軍衛生材料」としていますが、私が勝手に呼んでるだけです。
●米帝の薬品類は『
パイル二等兵の露営日記』にてご紹介致します。